■情報
■開示
■被告
被告らは,本件情報を利用して, 原告と競合する事業を行おうとしていた。
したがって,本件において,情報を開示した者又は情報の開示を受けた 者にとって,本件情報が有用であることは十分な意味を持つ。
ウ以上より,本件情報に有用性が認められる。
(被告ら) ア本件情報は,単に契約金額等を羅列したものであり,その金額等も概数 であるものが多い。
本件情報を利用して同種製品を効率的に販売すること など全く考えられないものであり,本件情報は,営業活動に全く役に立た ない。
イ原告は,本件情報は,被告らが設立する新会社及びKELにとって有用 性が認められる旨主張するが,有用性は,情報の保有者を対象して判断す べきであり,情報を開示した者又は情報の開示を受けた者を対象として判 断すべきではないから,原告の上記主張は失当である。
ウまた,そもそも,KELにとって,本件情報に有用性はない。
すなわち,本件情報は,原告が締結した保守契約に関するものであると ころ,保守事業は,製品を納入した業者が行うものであって,通常,第三 10 者が行えるものではないから,第三者が本件情報を取得しても,第三者の 事業には何ら役立たないのである。
エしたがって,本件情報に有用性は認められない。
⑶ 不正取得行為の有無(争点⑴イ)について (原告) 被告らは,不正の手段により,原告の営業秘密である本件情報を取得した。
(被告ら) 否認する。
⑷ 不正の競業その他の不正の利益を得る目的の有無(争点(1)イ)について (原告) ア被告らは,KELによる出資等の協力を得た上で,原告と事業内容が酷 似する新会社を設立し,被告らを含む少なくとも原告の従業員十数名を引 き抜き,原告の現在の顧客を対象として営業活動を行うことを目的として, KELに対して,本件情報を開示したのであるから,当該開示行為は,不 正の競業その他の不正の利益を得る目的を持ってされたものと認められる。
イ被告らは,原告がKELとの間で,平成18年4月7日に締結した,原 告がKELから1億円を借り受けることを内容とする本件覚書合意に基づ き,本件情報をKELに開示したのであるから,同開示行為は正当な業務 行為であると主張するが,以下の理由から,被告らの同主張は失当である。
(ア) 原告は,被告甲野に,KELとの交渉役を担当させていたが,同人 に対し,その交渉に必要な包括的な権限を与えていたことはない。
(イ) KELに対して資料を開示するか否かは,原告の代表取締役が最終 的に判断すべきことであり,被告らが判断すべきことではない。
仮に, KELから原告あてに正式な依頼があれば,資金繰り等経理の状況につ いては,直接経理担当者あてに問い合わせがあるはずであり,また,原 告社内においても,経営陣の判断に基づく資料を提出するはずである。
11 それにもかかわらず,被告らの独断に基づき,正式なルートを通さずに, 原告の重要な情報が流出した事実からすれば,被告らの上記行為には, 被告らによる強い背信的意図が感じられる。
(ウ) 仮に,本件情報をKELに開示したことが正当な開示であるのであ れば,被告らは,原告の許可なく,かつ,業務時間外の日曜日に,わざ わざKELの甲山及び乙山を原告オフィスに引き入れ,資料を閲覧させ るなどの行動をとるはずがない。
(エ) 被告丙野は,原告オフィス内で本件情報を開示した日の翌日,KE LのA及び丙山あての電子メールにおいて,「新体制新会社設立に向け, 事業計画根拠の整理・立案を進めております」とした上,「昨日の日曜 日には乙山室長,甲山部長にご協力頂いております」と記している。
こ のことから,KELに対する情報開示が,本件覚書合意に基づく開示で はなく,新会社設立に向けての準備行為であることは否定できない。
(オ) 被告らは,原告オフィス内で,本件情報をKELの甲山及び乙山に 開示した際,原告取締役である乙川花子(以下「乙川」という。
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)も同 席して,上記開示行為を認識していた旨主張するが,乙川は,被告らが KELの甲山及び乙山に本件情報を開示したことに対して,不審極まり ないと感じていた。
(被告ら) アKELとの本件覚書合意締結に至る経緯 (ア) 原告は,平成16年11月ころ,KELとの間で,委託料を700 0万円として,ソフトウェアの開発委託契約を締結したが,納期までに 製品を完成することができず,納期を先延ばしにしていたところ,原告 の資金繰りが悪化したため,平成18年3月ころ,KELに対し,未だ 完成していない上記製品の開発に要する資金の融通を申し入れた。
これに対し,KELは,原告の支払能力及び今後の追加融資の可能性 12 を判断するために,KELが要求する資料を原告が開示することを条件 として,原告の上記申入れを了承した。
このようにして,原告及びKELは,同年4月7日,KELが原告に 対して,返済期限を同年6月30日として,1億円を貸し付けること等 を内容とする本件覚書合意を締結し,これに基づき,KELは,原告に 1億円を貸し付けた。
(イ) 原告は,その後も,資金繰りが苦しく,KELに対して,更なる開 発費用の融資を要求し,これを受け,原告及びKELの間で,同月12 日,KELが原告に対して,追加融資として,1億3000万円を貸し 付けること,その返済期限については,本件覚書合意に基づき貸し付け た1億円との合計2億3000万円を,同年7月から平成19年2月ま で,8回に分割して返済すること等を内容とする合意をした。
(ウ) しかし,原告は,上記の各貸金を全く返済していない。
イ本件覚書3条は,原告に対して,KELに,原告の資金繰りの状況を示 す資料を開示する義務を負わせているところ,KELは,平成18年9月 上旬ころ,原告に対し,本件覚書3条に基づき,原告の資金繰りの状況を 示す資料の開示を要請したため,被告丙野や,対外的には原告の営業本部 本部長補佐として業務を行っていた被告甲野らは,同条の義務を履行する ため,本件情報をKEL担当者に開示した。
すなわち,被告甲野は,原告におけるKEL担当者であったが,原告に 対し2億3000万円もの融資を行ったものの返済を一切受けていなかっ たKELから,上記貸付金についての具体的な返済方法及び返済原資の有 無等についての納得のいく説明を求められ,この求めに応じなければ,K ELから法的措置を採られてしまうおそれがあると考え,自ら,又は,被 告丙野に指示して,KELに対し,本件情報を開示したのである。
原告としては,KELの上記開示要請を拒む余地はないことから,被告 13 甲野は,個々の開示について,原告代表者らの判断を仰ぐ必要がないと判 断したものである。
ウ被告甲野は,平成16年以降,原告のKEL担当者として,被告丙野ら と共に,KELとの交渉に当たってきたのであり,原告は,被告甲野が, 原告のKEL担当者としてKELと交渉するに当たり,同被告に対して, 必要な権限を包括的に与えていた。
なお,被告甲野らとKELの担当者が,本件保守契約書情報に係る書類 の確認を行っている際,乙川も,その場に同席しており,乙川とKEL担 当者は,原告の会社経営の今後等について話をしている。
乙川は,当然, 被告らがKEL担当者に本件保守契約書情報を開示していることを認識し ていた。
エ被告らは,以上の経緯で本件情報をKELに開示したのであるから,同 開示行為は,不正の競業その他の不正の利益を得る目的でされたものとい うことはできない。
( ) 雇用契約の付随義務として5 負担する秘密保持義務の違反又は機密保持契 約の締結によって負担した秘密保持義務の違反の有無(争点(2))について (原告) ア雇用契約に基づく付随義務違反 従業員は,雇用契約に基づく付随義務として,使用者の営業上の秘密を 保持する義務を負担している。
被告丙野,被告乙野及び被告丁野は,被告の従業員であったのであるか ら,雇用契約に基づく付随義務として,秘密保持義務を負担していた。
したがって,上記被告らが,本件情報をKELに開示したことは,上記 の秘密保持義務違反となり,上記被告らは,原告に対して,債務不履行に 基づく損害賠償責任を負う。
イ契約違反 14 被告甲野は,原告との間で機密保持契約を締結して(甲15),原告の 機密情報を原告の事前の書面による承諾を得ることなく,いかなる第三者 に対しても開示又は提供しないことを約している。
したがって,同被告が, 本件情報をKELに開示したことは,上記契約によって負担した機密保持 義務に違反し,同被告は,原告に対して,債務不履行に基づく損害賠償責 任を負う。
また,被告丙野は,原告に入社する際,原告に対して誓約書(甲16) を提出し,就業したことにより知り得た技術上・営業上のすべての情報及 び顧客情報に関するすべての情報が秘密情報に含まれるとした上で,原告 の許可なく,プロジェクト等に直接関与していない者,情報を知り得ない 者に対して,当該秘密情報を開示,漏洩しないこと,及び自ら使用しない ことを約束している。
したがって,被告丙野が本件情報をKELに開示し たことは,同被告が上記誓約書の提出によって負担した機密保持義務に違 反し,同被告は,原告に対して,債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
(被告ら) 被告らが本件情報をKELに開示したのは,前記(3)で主張したように, 本件覚書3条及び被告甲野が有する包括代理権に基づく正当な業務であるか ら,被告らが債務不履行責任を負うことはない。
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